歩合給の計算

歩合給の計算

歩合給の計算

歩合給における最低賃金(時給)の計算方法

 

支給された歩合給を「時給」に換算する必要があります。

 

歩合給の時給への換算方法

歩合給を時給に換算するための計算式は、次のとおりです。
【歩合給の時給換算式】
歩合給の支給額÷総労働時間=時給
「総労働時間」とは、一賃金計算期間(月給制であれば、1ヵ月)における総労働時間をいい、所定労働時間(定時で働いた時間)だけでなく、時間外労働(残業)をした時間もすべて含まれます。

 

事例(計算例)

「完全歩合給制(給料が歩合給のみで構成されている場合)」
【事例(月給制の場合)】
歩合給の額:20万円
所定労働時間:9時から18時(実働8時間/休憩60分)
1ヵ月の労働日数:22日
1ヵ月の残業時間:20時間
まず、1ヵ月の総労働時間を求めます。
総労働時間は、『8時間(1日の労働時間)×22日(1ヵ月の所定内労働時間)+20時間(1ヵ月の所定外労働時間)=196時間』となります。
ここでは、1ヵ月分の所定外労働時間(残業時間)を加えることを忘れないように注意しましょう。
次に、歩合給を総労働時間で割ることにより、時給を求めます。
『20万円÷196時間≒1,020円(1円未満切捨て)』
この金額が最低賃金を上回っていれば、問題ありません。

 

固定給と歩合給の両方が含まれる場合

「固定給」とは、基本給をはじめ、職務手当、役職手当など、毎月定額で支給される賃金をいいます。
一定の時間勤務すれば、一定の賃金を受け取ることができる点で、「時間」をもとに賃金が決定されています。
固定給が支給されている場合には、固定給部分と歩合給部分を分けて、別々に時給を計算し、それらを合算した時給額と、最低賃金とを比較します。
固定給を時給に換算するための計算式は、次のとおりです。
【固定給の時給換算式】
固定給の金額÷所定労働時間=時給
ポイントは、「所定労働時間」を用いることです。
月給制の場合には、所定労働時間は次のとおり算出します。
【所定労働時間の計算式】
1年間の所定労働日数÷12ヵ月×所定労働時間=1ヵ月の平均所定労働時間
『365日-年間休日数』で求めることもできます。
事例(計算例)
【事例(月給制の場合)】
固定給の額:10万円
歩合給の額:10万円
所定労働時間:9時から18時(実働8時間/休憩60分)
1年間の所定労働日数:240日
1ヵ月の労働日数:22日
1ヵ月の残業時間:20時間
まず、歩合給の時給を求めます。
前掲の事例で説明した計算式に当てはめると、
『10万円÷196時間(22日×8時間+20時間)≒510円(1円未満切捨て)』
となります。
次に、固定給の時給を求めます。
1ヵ月の平均所定労働時間は、
『240日÷12ヵ月×8時間=160時間』
となります。
次に、固定給を1ヵ月の平均所定労働時間で割ります。
『10万円÷160時間=625円』
最後に、固定給と歩合給を合算すると、
『625円+510円=1,135円』
となります。
この金額が最低賃金を上回っていれば、問題ありません。
最低保障と最低賃金
完全歩合給制の場合には、最低保障額が、賃金水準の6割を下回ってはならず、さらに最低賃金を下回ってはなりません。

 

完全歩合制の場合の、最低保障と最低賃金

完全歩合制を導入することが、直ちに違法になるものではありませんが、労働基準法によって「最低保障」が定められていることにより、実際には完全歩合制を実現することができない法制度になっています。

【労働基準法第27条】

(出来高払制の保障給)
出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない。
ここで、労働基準法に定められている「一定額」とは、一体どの程度を保障すればよいのかが、条文からは分かりません。
そこで、通達をみると、
「通常の実収賃金とあまり隔たらない程度の収入が保障されるように保障給の額を定めること」(昭和22年9月13日発基17号、昭和63年3月14日基発150号)と定められています。
そこで、実務的には、労働基準法で定める「休業手当」が、「平均賃金の6割」と定められていることの趣旨から、出来高払制の保障給についても、同様の水準にするのが妥当であるとして、運用されることが一般的になっています。
つまり前述の例では、18万円程度が最低保障額になりますが、例えば、最低賃金と比べると、20万円を上回る必要がある、などという可能性もあります。
したがって、歩合給を支給する場合には、「歩合給>最低保障額(平均賃金の6割)、かつ、歩合給>最低賃金」となる必要があることに留意しましょう。

 

歩合給が最低賃金を下回った場合の罰則

最低賃金法に違反
「最低賃金と時給額との差額×違法状態にあった労働時間数」
によって算出した額を、会社から従業員に対して返還しなければなりません。
会社は、最低賃金法に定められた罰則である「50万円以下の罰金(最低賃金法第40条)」を科せられる可能性があります。